2015年6月19日 更新

川を埋め尽くしたほどの盛況ぶり。江戸の川遊び

江戸では運搬、交通手段として船がよく使われていました。その便利さから遊山にも使われ始め、次第に多くの人を乗せる大きめな船が出来て造られるようになってきます。納涼、特に隅田川の川開きで行われた花火などでは、余りの人出に川が船で埋め尽くされるほどで、船を伝って対岸へ渡ることが出来るほどの混雑振りだったとか。

早舟から始まった猪牙船(ちょきぶね)。そして屋形船へ

筆者(江戸東京博物館にて) (6098)

via 筆者(江戸東京博物館にて)
漁師の為の早船(押送り船)を小さくしたのが、猪牙船(ちょきぶね)です。一人か二人、多くても3、4人が限界の小さな乗り物で、長さが7メートル、幅が1メートル23センチほどです。船先の水押が猪の牙のように尖っているから「猪牙」と呼ばれたとも、小回りの利くことを「チョロ」と言うのがなまって「ちょき」になり「猪牙」の字が当てられた、と言う説もあります。
この小回りの利く船が、水路の発達した江戸の町で、橋をちまちまと渡って歩いていくのよりも早くて便利だと好まれて、人々が船を雇いあちこちに出掛けるようになりました。

こうした船を用立てたのが船宿です。船宿は本来荷物を運送する船問屋を指すそうですが、江戸ではタクシーのように送迎を含む遊び船の手配をしていました。小綺麗な二階建ての店で、客が船を待つ間にちょっとした酒肴などを出したりしました。
船の便利さに、交通手段としてだけでなく、船に乗る事を目的とした遊山としても使われるようになりました。これは上方の納涼文化を取り入れたのが起こりだといわれています。平田舟と言う平らな船に屋根をつけて納涼に使ったのが屋形船の始まりのようです。次第に屋根や障子を設えた、大きなものになって行きます。しかし、屋形船の数が急激に増加し、加えて造りが余りに大きく、また贅沢なものになったため、とうとう幕府の禁令により大型屋形船の建造禁止、及び保持数を制限されてしまいます。
また、風紀や防犯上の理由から屋根船とともに、寒い日や雨が降り込んだりする場合以外は障子やすだれを開けておくようにお達しが出ました。
筆者(江戸東京博物館にて) (6101)

via 筆者(江戸東京博物館にて)
ちなみに屋根船は、簡単にすだれを立てまわした船です。日除け船とも呼ばれ、屋形船よりは小さい船ですが、これでも江戸の人々は舟遊びをしました。すだれが屋根に跳ね上げられているのは、前述のお達しのためです。
筆者(江戸東京博物館にて) (6103)

via 筆者(江戸東京博物館にて)

食も求めた川遊び

 川遊びでは、簡単な酒肴や茶と菓子を出すだけの場合と、料理茶屋に料理を頼んで、船内で調理や仕上げをしてもらったり、重箱などの弁当にしてもらったりしたようです。

 『料理早指南』には、舟遊びのための重箱の献立が上、中、下、と三ランク紹介されています。上、中は舟遊びに誘われた方が挨拶として持って行くのに良い献立例、下が通常の遊山に自分のために用意する弁当程度の献立とされています。上とされた献立を見てみると、初段のお重には「琥珀玉子、おらんだ天ぷら、鱚塩焼き、うちくらげ、小茄子の蜜煮などの肴にもなるもの、二の重には「小鯛、あいなめ、この葉がれい、もずく、花柚」とこちらは火を使わないメニューのようです。三の重は刺身として「洗い鱸、しらす、細く引いたかんてん、岩たけ、山葵」、四の重がお菓子で「茹でたかたくり麺、上あん、白砂糖」などの品々があがっています。

 また、船で料理をする時の注意事項として、手狭であり、火を使うと暑苦しくなるため、船に持ち込む前によく下ごしらえをしておくこと、吸物などはあっさりとした味わいで、薫り高く涼やかなものになるようにすること。器や見た目でも涼やかさを演出するための工夫を怠らぬこと、などが書いてあり、どんなところでも美味しいものを、そして目でも楽しむことを求めていたことが判ります。
また『素人包丁』には船で調理するための仕込み棚が紹介されています。かなり大きな棚で、引き出しがたくさんあり、皿や箸、調理道具の他、下ごしらえした材料や調味料などをしまうことが出来るようになっています。箱や籠に材料や道具を積むのではなく、専用の棚が作られてしまうほど、行楽と食が深く結びついていたことが判ると思います。
筆者 (6107)

via 筆者
また、そうした川遊びの船を狙って、猪牙船に野菜やスイカ、蒲焼などの簡単な食べ物を積んで漕ぎ回っている船もおり、それをうろうろ船と呼びました。押し付けるように突きつけて売ったので、「つきつけ売り」とも呼ばれたそうです。大坂でも同じような船があり、「くらわんか」と言いながら同じように強引に売りつけたので「くらわんか」と呼ばれていたと言われています。
筆者 (6109)

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(rauya)

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ビデリシャス編集部 ビデリシャス編集部