2015年7月7日 更新

一口食べれば料理人の腕がわかる? 鯛の潮汁

 現在でもさまざまな料理に使われている鯛ですが、江戸時代では「諸魚の冠(かしら)」と言われるほどの特別な存在でした。たくさんの調理法がある中でも、料理人の腕を問われたのが潮汁です。

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 潮汁は塩だけで味をつけた吸い物です。鯛だけでなく、スズキ、ハモ、コチ、タラなどの、新鮮な頭やあら、骨付きの切り身などを使います。ハマグリの潮汁はお雛様でも出しますが、そればかりでなくめでたい席ではよく使われます。主に淡白な味の魚を使う印象がありますが、『料理早指南』(享和元年、1801)では応用編としてカツオや、アジの潮汁が紹介されています。

 現在では昆布だしを使ったりする事もあるようですが、江戸時代の料理本では塩と酒で調味するのがほとんどのようです。
 『古今料理集』(延宝二年、1674)では「塩を喰塩に心持つよくいれ……酒を過ぎたる程にさして……」とあり、塩気を強めに味をつけた吸物だったことが判ります。『料理早指南』で初めて、味の加減に醤油を少し入れる、とあるほかは鯛の場合はほとんど酒と塩だけです。例外としては『料理網目調味抄』(享保十五年、1730)の料理で、出汁を使っています。
 醤油で味の加減をしても良いと書いてあるのは、『合類日用料理抄』(元禄二年、1689)、『当節節用料理大全』(正徳四年、1714)で鱒を使う場合だと書いてあります。

 作り方に多少の差があるとは言え、味つけが塩と酒だけと言うシンプルな一品故に、料理人の腕がはっきり出てしまう料理だと言われたのも納得がいくような気がします。

小唄にも名前が出るほどの人気だった料亭、平清

"A RESPECTABLE TEA HOUSE" Image from page 150 of "Japan and the Japanese illustrated" (1874) by Internet Archive Book Images (9174)

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八百善と並んで有名だった料理茶屋――今で言う料亭――「平清」は、もともと歌舞伎観劇に来た客の世話をする芝居茶屋、平野屋の料理人、清助が創業した店だと言われています。彼が独立して料亭を構えたのには、彼の炊いた飯がとても美味しく、主人が感心して料理を仕込んだ、と言う節や、元々の料理人の代理で料理を出した所それが非常に美味しかったため、ちゃんとした料理人として引き上げられたと言う説があります。

 ついには主人や贔屓筋の薦めで独立し、平清が深川八幡通に開業しました。清助の料理は素材の味を殺さないよう淡白を心がけ、献立に工夫を凝らした料理でたちまち人気の店となったようです。その中でも潮煮は特に有名となりました。
 当時の小唄で「此頃のはやりもの、画師は文晁、詩は五山、料理八百善・金波楼、わたしゃ平清がよいわいな」と言われるほどだったと言います。

 『料理早指南』では精進の潮汁として、昆布だしにもずく、とさかのり、寒天、焼き芋などを使ってもよい、とあるのが興味深い所です。

(rauya)

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ビデリシャス編集部 ビデリシャス編集部