2015年6月26日 更新

シズル感たっぷりの料理の数々!超極寒の地で食べる馴染みのメニューとは『南国料理人』

【ごはん映画】西村(堺雅人)は、ドームふじ基地へ南極観測隊の料理人としてやってきた。限られた生活の中で、食事は別格の楽しみ。手間ひまかけて作った料理を食べて、みんなの顔がほころぶのを見る瞬間はたまらない。しかし、日本には妻と8歳の娘と生まれたばかりの息子が待っている。これから約1年半、14,000km彼方の家族を思う日々がはじまる・・・・・・。

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誤解を恐れずに言えば、これは食いしん坊からするとズバリ“拷問”のような映画です。劇中には実にさまざまな料理が出てくるのですが、まあ、どれもこれもシズル感たっぷり! あ、「シズル感」とは、料理写真の世界なんかで使われる言葉で、いわゆる“おいしそうな感じ”。例えば、天ぷらを揚げる際のパチパチした油の音や、茹でたてのラーメンから立ち昇る白い湯気、といったことですね。そのシズル感を演出しているのが、いまや日本の“ごはん映画”に欠かせない存在となったフードスタイリストの飯島奈美さん。映画『かもめ食堂』(’06)やNHKの連続テレビ小説『ごちそうさん』(’13)の料理を監修したことでも知られています。フードスタイリストは料理や食材をおいしく見せるプロフェッショナル。本作を見れば、その素晴らしい演出力を実感できるはずです。

物語の舞台は南極大陸のドームふじ基地。気温は氷点下57度にもなる超極寒の地で、右を向いても左を向いても氷の平原が広がるばかり。ペンギンもアザラシも一匹たりとも生息してはいません。そんな非常に厳しい気候条件の土地に、海上保安庁に務める西村(堺雅人)は、突如、南極越冬隊の一人として送り込まれます。彼の任務は、隊員8名分の食事を作ること。もちろん娯楽はゼロ、通話料金が高すぎて日本の家族と電話することすらままならない。そんな極限の環境における楽しみは“食べること”。西村は、隊員たちを飽きさせないように、日夜、メニュー作りに勤しみます。

その料理がおいしそうなことといったら! 決して奇を衒ったものではなく、ほとんどが私たちの日常に馴染みのある料理ばかりなのですが、思わず画面にヒョイと手を伸ばして口にしてみたい衝動に駆られます。印象的なものをいくつか紹介しましょう。
●おにぎり
ある日の昼、西村は、ほかほかの炊きたてごはんでおにぎりを作ります。カメラはつやつやした白めしを受けた西村の手元にクローズアップし、音声は彼がそれを握る際の「きゅっ、きゅっ」という音を拾います。具材は鮭、いくら、タラコ……。日本から約1万4000キロも離れた場所では、日本のソウルフードはまさに“神”。外の作業を終えた隊員たちが体を震わせながら競い合うようにして海苔が巻かれた三角形に手を伸ばします。ちなみに、おにぎりのお供は豚汁。熱々のソレを、彼らがハフハフいわせて食べるのを見ていたら、“温かい”ということは“ごちそう”になるのだと思わされました。冷え切った体に一杯の珈琲が染みるように、“温度がある”ということは、文字どおり人を温めて癒してくれるんですね。

●伊勢海老のエビフライ
“温かい=ごちそう”ということでいえば、劇中に登場する「伊勢海老のエビフライ」もそれを象徴する料理でしょう。南極では、言うまでもなく日本のようにスーパーやコンビニで気軽に食材を手に入れられるわけではありません。食材は、缶詰にしたもの、乾燥にしたものがほとんどになります。そんな中、ある日、彼らの食事のために伊勢海老がゴロゴロと届けられる。西村は隊員たちに「何を作りましょうか」と訊ねます。みんなの希望は「エビフライ」。伊勢海老といったら刺身だろうと彼は思うわけですが、隊員たちの望むままに伊勢海老に衣を付けてフライにします。その味わいは、口を動かす彼らの表情を見るにつけ、期待していたエビフライのものではなさそうなのですが、見事な髭をたくわえた巨大なフライが皿の上にデ~ンと鎮座する様はなんともおかしみがあり、これまた味わってみたい気分にさせられます。

そのほか、越冬隊の一人である雪氷学者の本さん(生瀬勝久)の誕生日には、丸焼きにした松坂牛の分厚いローストビーフ、極夜(一日中、太陽が昇らない時期)の晩にはエビチリや麻婆茄子、南極の当時を祝うミッドウィンター祭ではフォアグラや白身魚のポワレといったフレンチのフルコースが登場します。

そして、極めつけは……
●ラーメン
越冬生活が長くなるにつれて隊員たちのストレスは蓄積し、さまざまな問題が発生します。“貯蔵した食料の中からラーメンが底をつく”という事態もそのひとつ。深夜に厨房に忍び込んでラーメンを盗み食いする人が続出したのが原因なのですが、その事実を知った盗み食いの張本人である気象学者のタイチョー(きたろう)は今にもショックで倒れそうに。しかし西村が麺を打とうにも、ラーメンに必要なかん水がないから叶わない。豪華なカニの朝食もタイチョーを慰めることはできず、夜中、彼は西村を訪ねて涙ながらに訴えます。「西村くん、僕の体はラーメンでできているんだよ」。

まるで愛の告白のようで、観ている方としてはクスッとしまうのですが、そこで西村は一念発起。ベーキングパウダーを水に溶かせばかん水の成分である炭酸ナトリウム水溶液が得られることを知り、手打ちのラーメン作りに挑戦します。そして試食。箸を付けたタイチョーの目にみるみる歓喜の色が宿ります。外から戻った兄やん(高良健吾)が、すごいオーロラが出ているから観測したほうがいいのではないかと進言するも、タイチョーは「そんなのほっとけ」と一蹴。満面の笑みを浮かべてラーメンをすするのです。

空にかかるオーロラより目の前にある一杯のラーメン。おにぎりと同様に、ラーメンは日本人にとってのソウルフードであることをしみじみ物語るエピソードですよね。

2時間5分。エンドロールが流れる頃には、胃袋の我慢が限界値に達していることが予想されます。どうか本編を観賞する際には、そのあとの食事のアテを確保しておくことをお勧めします。
(甘利美緒)
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『南国料理人』
発売中
発売元/販売元:バンダイビジュアル
価 格:¥3,800(本 体)+税
(C)2009『南極料理人』製作委員会
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ビデリシャス編集部 ビデリシャス編集部