2015年4月13日 更新

【ごはん映画】自分の足でおいしいを探す楽しさを与えてくれる『UDON』

【コラム】"食"にまつわる映画を紹介する「ごはん映画」の連載、今回は『UDON』うどんの名産地、香川県を舞台に繰り広げられる「うどん」とうどんに関わる「人」のあったかストーリー。今すぐ美味しいうどんを探しに行きたくなっちゃいますよ

 (1349)

外国を旅している最中、無性に日本食を恋しく思うことがありませんか? せっかくの機会だから思いっきりローカルフード漬けになればいいのに、カラダのどこかが鰹や昆布の出汁、白いごはんを求めてしまう……。

以前、私が仕事でアメリカのケンタッキー州を訪ねたときもそうでした。2泊4日の弾丸出張で、現地での食事回数はたったの4回。お約束のフライドチキンにかぶりつき、人口より多いのではなかろうかというビーフのステーキをパクつき、ご当地グルメ「ホットブラウン」(ターキーのオープンサンドイッチ)に舌鼓。そして最後の晩ごはん。私たちスタッフは、さんざん迷った挙句、和食をチョイスしました。もともと味はあまり期待していなかったのですが、実際、キッチンから運ばれてきた寿司のネタはお世辞にも鮮度がいいとは言えないもので、うどんは茹ですぎたのかすっかり伸びきっていた。仮に日本で同じようなものを出されたら心底がっかりしたにちがいありません。でも、そこは日本と14時間の時差があるケンタッキー。テーブルを囲むみんなの表情は一様に朗らかで、誰ともなしに「ほっとするね」と呟いていたのです。恐らく、これがソウルフードというもののチカラなのでしょう。

すっかり前置きが長くなってしまいましたが、今週ピックアップする「ごはん映画」は、そんな日本人にとっての国民食である「うどん」にフォーカスしたもの。ずばりタイトルは「UDON」(’06年公開)です。

監督は本広克行氏、製作総指揮は亀山千広氏。あの『躍る大捜査線』のゴールデンコンビですね。そして、主演がユースケ・サンタマリアさんとくれば、思わずクスッと笑えてほろっと泣けるエンターテイメント性を期待してしまいます。

主人公の名は松井香助(ユースケ・サンタマリア)。「世界中を笑わせる」と意気込んでニューヨークに渡り、スタンダップコメディアンとして営業活動に励む日々を送ります。しかし夢むなしく、その人気は鳴かず飛ばず。仕事にあぶれて生活は立ち行かなくなり、故郷である香川県に戻ることを余儀なくされます。

ご存じのとおり、香川県はうどんの名産地。映画の中でも語られますが、香川県には、人口100万人に対してうどん屋が900軒あるそうです(ちなみに東京には、人口1250万人に対してマクドナルドが800軒とのこと。香川が“うどん県”だと納得させられますね)。香助の実家もそうした香川のうどん文化を支える一軒で、小さな製麺所を経営しています。そこでは朝に夕に、堅物の父親(木場勝己)が黙々と麺を打っている。そんなところへ、ひょっこり姿を現す香助。姉(鈴木京香)や義兄(小日向文世)は彼を温かく迎え入れますが、それとは対照的に、父は「出戻りに食わせるうどんはない」と冷たく突き放します。

ある日、香助は山道を運転しながらガス欠に。そこで、タウン情報誌の編集者・宮川恭子(小西真奈美)と遭遇します。熊に襲われそうになり、さらには崖の上からクルマごと滑り落ち、それでもなんとか難局を乗り切った二人は、人里離れたところにぽつんと佇む一軒のうどん屋へ。ぷっくりした黄身がおいしそうな生卵と青々としたねぎをトッピングした釜揚げうどんをハフハフしながら心を落ち着かせます。

その後、香助は同級生の鈴木庄介(トータス松本)の紹介で、恭子も働くタウン情報誌の編集部に就職。雑誌の売り上げを伸ばすための新機軸として、香川のご当地グルメである讃岐うどんにフォーカスした企画を思いつきます。そして、あれよあれよというまにうどんのブームが巻き起こっていくのです。
ストーリー展開は非常に単純明快で、かつ香助と父親のギクシャクした関係がスパイスとなり、笑いだけでなく涙もありの作品に仕上がっているのは、ヒット作を生み出したスタッフの面目躍如だと思わされました。それと同時に、私はこの作品を観て、ある想いにとらわれました。それは「おいしいってなんだろう」ということです。

この映画の中で、香助や恭子、庄介たちは、自分たちの足、そしてタクシーの運転手や郵便局員、お巡りさんなど地元をよく知る人々からの情報を元手にうどん屋を食べ歩きます。大きな駐車場を構える店もあれば、地元の人でも気が付かないような手狭な店もある。それらを記事化する際、彼らは大胆な行動に出ます。地図を載せなければ、肝心のうどんの写真も載せない。誌面にあるのは彼らの体験談をまとめたテキストのみ。その理由は、“読者が自分でたどりついてこそ感動は得られるものだから”。つまり、写真を載せてしまったら実物を見る前から知った気になってしまうし、地図が付いていれば苦もなくアクセスできてしまう。そのヒトサラにどうやってありつくかも含めて「おいしい」という言葉は生まれる、という発想です。

昨今の点数やランキング主義によって「おいしいもの」の情報はいくらでも手に入ります。それは一つの指標であり、楽しみ方であり、私はことさら否定する気もありませんが、それを鵜呑みにするのではなく、最後は自分の味覚と嗅覚を信じ、自分でその味わいを判断したいと考えます。だって、「おいしい」はあくまで主観。私事の繰り返しになりますが、日本から遠く離れたケンタッキー州で口にした寿司やうどんが心を揺さぶってくれることもあるのですから。

この作品には香川県内に実在するうどん屋も数多く登場しています。映画を観てから、「うまい」を求めて旅をする。そんな楽しみをも与えてくれる一本です。

(甘利美緒)
 (1354)

『UDON』
発売中
発売元:フジテレビ ジョン ROBOT 東宝
販売元:ポニーキャニオン
価 格:¥3,800(本体)+税/2枚組
(C)2006 フジテレビジョン・ROBOT・東宝
6 件

関連する記事 こんな記事も人気です♪

柚子胡椒香る♪和風カルボナーラ!

【動画】今回はパスタの代わりにうどんを使った「和風カルボナーラ」の作り方をご紹介します!柚子胡椒の爽やかな香りとピリっとした辛みが食欲そそります。さっぱりした味わいなので食欲がない時にもオススメですよ♪

夏にぴったり!コク旨くるみタレ冷やしうどんのつくり方

【動画】暑くて食欲減退な人におすすめな野菜たっぷり冷やしうどんレシピ!甘酒を使った特製のくるみタレがうどんのおいしさをさらに引き立ててくれます♪とってもヘルシーな冷やし麺をさっそく試してみてください!

離乳食:9〜11ヶ月 お野菜たっぷりうどんの作り方 カミカミ期

離乳食の柔らかさや質感などを動画でご紹介♪ 和風だしで煮た、うどんとたっぷりの野菜で栄養も満点。

離乳食:7〜8ヶ月 お野菜たっぷりうどんの作り方 モグモグ期

離乳食の柔らかさや質感などを動画でご紹介♪ 和風だしで煮た、うどんとたっぷりの野菜で栄養も満点。

レンジで簡単!お家で本格ポップコーンが楽しめるポップコーンメーカー

映画館に行くと甘い香りが漂っていて、つい食べたくなってしまうポップコーン。外出先でなくても、お家でもポップコーンは作ることができます。「弾ける勢いが良過ぎて怖くないの?」そんなことはありません。自宅でできるポップコーンポッパーを是非お試しあれ!

キーワード

ライター

ビデリシャス編集部 ビデリシャス編集部