2015年7月8日 更新

文句を言われても食べたい?江戸っ子が飛びついた初鰹

ネギと生姜たっぷりの鰹のタタキは美味しいですよね!今では一般庶民でも手軽に食べられる初鰹ですが、昔は蕎麦300杯分以上に相当するほどの贅沢品だったんだとか。

きっかけは、北条氏綱と徳川家康

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初物を食べると寿命が七十五日延びる、と言われていますが、江戸っ子は特に初物を珍重しました。その中でも有名なのが初鰹です。
鰹を最初に持て囃したのは、戦国武将の北条氏綱でした。相模湾で行われていた漁を見物していた氏綱の船に、一尾の鰹が飛び込んで来たのを、「勝負に勝つ魚」に通じて非常に縁起がいいと喜んだ氏綱は、それ以降戦に出る際の酒肴には必ず鰹を食べたそうです。

これに習って鰹をめでたい魚として扱ったのが徳川家康で、やがてそれが江戸市民にまで浸透しました。

めでたいと喜ぶ魚の初物ならば、食べねば、と持て囃されたのも納得がいきます。

蕎麦300杯分以上に相当する贅沢品だった!

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天明(1781年~1789年)、寛政(1789年~1801年)頃にもっとも珍重され、中には魚市場にあがるのを待てずに船を出して、鰹を運んでくる船から直接買った人もいたそうです。

旧暦の四月頃、今の五月頃に穫れる初鰹は三浦沖であがりました。穫れた鰹は押送船(おしおくりぶね/おしょくりぶね)で日本橋の魚市場まで運ばれて、売りに出されました。押送船は小型の快速艇で、当時主流だった風を使った操船法とは違い、風の有無に関係なく櫓を使って押し進むため、押送りと呼ばれたと言います。

そうして早船で鮮度を保ったまま運び込まれた鰹は、天明頃では一本約三両の値がついた贅沢品でした。一両を現在の価値に換算するのは難しいですが、当時の蕎麦が三百杯以上食べられる位の価値でしたから、現在の立ち食いソバ屋などのかけ蕎麦やうどんで換算すると、結構な金額になるのが判ると思います。

それから三十年ほど経った文化年間(1804年~1818年)頃でもその高騰ぶりは続いていたようです。

あがった鰹の約半分が将軍家で買い上げられ、高級料理茶屋八百膳が三本買い、残りを魚屋が買ったそうですが、そのうちの一本を歌舞伎役者の中村歌右衛門が三両で買ったとの記述があるそうです。値段が値段ですから、なかなか長屋に住む一般庶民が手を出せるものではありませんでした。

当時の川柳からわかる初鰹の価値

「初鰹妻に聞かせる値ではなし(川柳評万句 安永六年 松)」

川柳に詠われたように勢い込んで買ったものの、あまりの高さにいくらで買ったのと聞かれても、怖くて口に出せない人もいたかもしれません。

中には家財道具を質に入れたりして、ありったけの金を出しきって鰹を買しまった人などは、

「初かつほ女房に小壱年言われ(柳多留 十五編 安永九年)」

奥さんからことあるごとに文句を言われていた様子が目に浮かびます。

実際に買った鰹は、冷蔵庫もない頃ですから、すべて刺身などにして

「わんとはし持ッて来やれと壁をぶち(柳多留 三編 明和五年)」

と、同じ長屋の住人に振る舞ったかも知れません。

やがて手頃な食べ物に

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これだけ江戸庶民が持て囃した初鰹ですが、五十年も経たない嘉永(1848年~1854年)頃になると、かつてのような高値はつかなくなります。

一時は安い値でもつけようものなら、「魚の方が買われたくないと言っている」などと居丈高に振る舞い、得意先に丸一本買ってもらうのが信条だった鰹売りも、次第に細かく切り分けて長屋連中に売ったのではないでしょうか。

この頃は、大根下ろしと醤油で刺身にした鰹を食べるのが主流だったようですが、辛子酢、辛子味噌などにつけて食べる方法もあったようです。

現在良く目にするたたきも、「焼き切り」と呼ばれ、古くからある食べ方だったようです。由来も色々あり、鰹節を作っていた時にできた副産物だとする説や、皮の下にいる寄生虫を殺すためだったとか、中毒防止のために生で食べるのを禁止されたのを、表面だけ焼いて焼き魚だとして食べた説など色々あるようです。

ショウガたっぷりのお醤油で食べるのも美味しいですが、ショウガと辛子醤油で食べるのもまた美味しいですよ。

(rauya)
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ビデリシャス編集部 ビデリシャス編集部