2015年6月16日 更新

夏のおかず、インゲンのごまびたしと鰯の摘み入れ

赤?白?インゲン豆の種類は豊富!夏野菜インゲンのごまびだしはサッパリとコクのあるお浸しです。ジメっとしたこの季節に栄養満点のおかずはいかがですか?

筆者 (5893)

via 筆者
夏には、あっさりとしたものをサッと食べたくなります。そんな時に挑戦してみたいおかずをおかず番付からご紹介します。

インゲンのごま浸し

筆者 (5896)

via 筆者
インゲンは現在では一年中食べられますが、夏が旬の野菜です。湯がいておひたしにしたり、炒めたりして食べても美味しいですね。
 古くから食べているような気がしますが、江戸時代に伝わってきた野菜です。
 “隠元”と言う明の禅僧が承応三年に来日した際に伝えられたと言われています。隠元禅師は日本黄檗(おうぼく)宗の開祖で、後に大流行する普茶料理(ふちゃりょうり)や山水画などの芸術、建築様式などの黄檗(おうばく)文化の普及に貢献しました。

 ただ、隠元禅師が持ち込んだ豆は、別種のフジマメではないかと言う説もあり、はっきりとしません。『年中番採録』(嘉永二年、1849年)にも関東ではインゲンをフジマメと言うと書かれているほか、関東と関西では呼び方が違うようで、残念ながらどれが本当か判らないようです。
 インゲンは細長い未熟なものをサヤごと食べる「サヤインゲン」の他、熟成した豆を食べる「赤インゲン豆」、「白インゲン豆」、「うずら豆」などがあります。「赤インゲン豆」などは乾燥させたものをもどし、煮豆やお菓子の餡などにつかわれます。

江戸時代の料理本では、煮物の彩り、カツオ等の魚と一緒に煮るというものもありますが、胡麻和えなど和え物がよいと書いているものがほとんどです。それだけインゲンと胡麻の相性がよいと言うことなのかもしれません。

 胡麻は『本朝食鑑』(元禄十年、1697年)では、黒胡麻は腎に入り、白胡麻は肺に入りともに五臓を潤し、血流を良くし、胃腸を整えると書いてあります。日本だけでなく世界中で古くから体にいい食べ物として知られているだけに、本朝食鑑の書き方にも納得がいくような気がします。

 写真のインゲンの胡麻びたしは、筋を除き色よくなるまでサヤインゲンを茹で、適当な長さに切ります。胡麻をよく擂って味噌をほんの少し加え、さらに出汁で緩く伸ばしたもので和えました。塩味が濃くならないように、薄めの出汁が良いと思います。

鰯のつみいれ

筆者 (5899)

via 筆者
魚の身をすりつぶして、箸で湯に摘み入れたことから、摘み入れ、つみれ、となったようです。魚は鰯に限ったことではなく、淡白な味の白身魚やエビ、サバ、イワシなどの青背の魚でも良かったようです。『守貞謾稿』(嘉永六年、1853年)によれば、京阪では「うけいれ」と呼んでいたそうで、鯛の身を擂って小梅の実の大きさほどに作ったものだったようです。

 『古今料理集』(延宝二年、1674年)では、三枚におろし骨を丁寧に取り除いた物を薄く切り、よく使い込んだすり鉢でよく擂ると書いてあります。
 同じ『古今料理集』ではつみれの形状もいくつか紹介されています。包丁の刃の所につけたタネを箸でふっくらするように摘まみ切るのを「切摘み入れ」、かまぼこ板のふちに筆の軸ほどの太さに細長くつけて板共に茹でるのが「細つみいれ」、または「細かまぼこ」と言うそうです。また「花摘み入れ」は豆ほどの大きさに箸で摘まむこと、「大摘み入れ」は約六センチほどの大きさ、「小摘み入れ」は二センチほどの大きさにするものを言うとあります。
 湯に摘み入れたものは、浮かんできたところを取ってお吸物や味噌汁に使います。

 鰯は種類によるようですが、おそらくここでは夏から秋にかけて、旬のマイワシだと思われます。『古今料理集』では、鰯は下魚で持て成しの料理に使うには不適切であると書かれています。逆に170年ほど後に主婦向けの料理本として書かれた『年中番菜録』では「いわし百珍と言うほど使い方がたくさんある」と書かれているので、それだけ普段使いの魚だったと言うことかも知れません。おすすめの料理としては辛子なます、煎りもの、酢煎り、ぬた、粕煮、味噌焼き、焼き物、五斎煮などが書かれています。ほかの料理本を見てもおおむね、焼き物、なます、煮物がほとんどのようです。
 鰯など青背の魚をつみれにする場合には生姜を使って生臭みを消します。また、ふんわりと作るには卵の白身やすりおろした山芋などを入れると良いようです。

 一つ興味深かったのは、『古今料理集』で魚のすり身を作るときに、新しいすり鉢は砂が出ることがあるので、良く使い込んだものをきれいによく洗って使うこと、とあることです。多少摺り目の減ったものがすり身を作るのにはちょうど良かったのかも知れません。
 『古今料理集』では、魚の身とイカを摺って塩などで整えたものを、板に盛って蒸す蒲鉾やはんぺんと共通で使えるタネだったせいもあるかと思いますが、「とっくりと擂る」と言う表現が使われていることからしても、鰯を相当に滑らかになるまで擂ったのではないかと思われます。今はフードプロセッサーがあるので、粗目のやや食感のあるものから、滑らかな口当たりの物までいろいろに試してみるのも面白いかも知れません。

(rauya)

Thumbnail by photo AC
http://www.photo-ac.com/
9 件

関連する記事 こんな記事も人気です♪

簡単調理で食べられる夏のおかず

 江戸時代のおかず人気ランキング、『日日徳用倹約料理角力取組』から夏のおかずを二品ご紹介します。一品はあっさりと茹でたさやえんどう、そしてもう一品は力強い味のかぼちゃごま汁です。どちらも簡単な調理でおかずになり、暑い夏には大助かりの品ではないでしょうか

塩茹でだけじゃないそら豆、天麩羅だけじゃない芝エビ

エジプトで4000年前から栽培されていた空豆のおかず、今では希少価値な芝エビのおかず。塩茹で天ぷら以外の美味しい食べ方をご紹介します!

焼いてヨシ、煮てヨシ、お刺身でもヨシの野菜、茄子!

水なす、長茄子、米茄子、丸茄子!茄子と言えども種類豊富!!様々なアレンジが効く茄子のレシピを江戸時代からおかず番付上位ランキングからご紹介します♪

魚の中の王様と呼ばれた鯛と鯉。生造りはいつから始まったのか?

食べタイ、知りタイ、鯛のこと!お目出度い席で出される生造りは江戸時代ではどのように始まったのでしょうか?!江戸時代のおかず番付から東西1位の鯛と鯉の生造りの始まりをご紹介!

おかず番付!春を感じさせる一品『蓮の木の芽あえと鯖の味噌漬け』

春を予感させるの蓮と鯖!?木の芽あえと鯖味噌漬けは期間限定、春の味!

キーワード

ライター

ビデリシャス編集部 ビデリシャス編集部