突然ですが、皆さんは妄想が好きですか? 例えば気になる人ができて、その人が何を考えているのか、どんな生活をしているのか……あれやこれやと思いをめぐらした経験は、誰にでも少なからずあるのではないかと思います。
今回、ご紹介する映画『ボヴァリー夫人とパン屋』の主人公・マルタン(ファブリス・ルキーニ)は、その妄想癖が人より強いタイプ。パリで12年間出版社に勤務していた彼は、平穏な生活を求めて故郷のノルマンディーに帰り、家業のパン屋を継いで生活しています。ある日、自宅の隣家にイギリス人夫妻が引っ越してきたことで、彼の“妄想スイッチ”がオンに。というのも、彼はノルマンディーを舞台にしたギュスターヴ・フローベルの長編小説『ボヴァリー夫人』をボロボロになるほど愛読しているのですが、引っ越してきた夫妻の名前は、偶然にもチャーリー&ジェマ・ボヴァリー。マルタンは小説の主人公とジェマを重ねあわせて、自由奔放に振る舞うジェマ(ジェマ・アタートン)から目が離せなくなり、妄想の虜になっていきます。しかし、当然のことながら、ジェマは今を生きる女性。マルタンの妄想など知る由もなく、自分の好きなように生きようとする。そんなところに若き美青年が表れて、ジェマは彼と人目を忍んで情事を重ねるようになります。ちなみに、小説におけるボヴァリー夫人とは、不倫と借金の末に追い詰められて服毒自殺を図る人物として描かれています。ゆえに、妄想逞しいマルタンは思います、ジェマはボヴァリー夫人と同じように悲しい末路を迎えてしまうかもしれない……。心配したマルタンは、思わぬ行動に! そして、物語は急展開していきます。
惹きつけられたのは、マルタンがジェマにパンの捏ね方を教えるシーン。台の上で生地を伸ばしてはまとめていくのですが、その一連の工程が、官能的な世界を描かせたら天下一品のフランス映画だからなのか、なんともエロティックに見えてくる。生地のモッチリした弾力感までもが、スクリーン越しに伝わってくるようです。
今回、ご紹介する映画『ボヴァリー夫人とパン屋』の主人公・マルタン(ファブリス・ルキーニ)は、その妄想癖が人より強いタイプ。パリで12年間出版社に勤務していた彼は、平穏な生活を求めて故郷のノルマンディーに帰り、家業のパン屋を継いで生活しています。ある日、自宅の隣家にイギリス人夫妻が引っ越してきたことで、彼の“妄想スイッチ”がオンに。というのも、彼はノルマンディーを舞台にしたギュスターヴ・フローベルの長編小説『ボヴァリー夫人』をボロボロになるほど愛読しているのですが、引っ越してきた夫妻の名前は、偶然にもチャーリー&ジェマ・ボヴァリー。マルタンは小説の主人公とジェマを重ねあわせて、自由奔放に振る舞うジェマ(ジェマ・アタートン)から目が離せなくなり、妄想の虜になっていきます。しかし、当然のことながら、ジェマは今を生きる女性。マルタンの妄想など知る由もなく、自分の好きなように生きようとする。そんなところに若き美青年が表れて、ジェマは彼と人目を忍んで情事を重ねるようになります。ちなみに、小説におけるボヴァリー夫人とは、不倫と借金の末に追い詰められて服毒自殺を図る人物として描かれています。ゆえに、妄想逞しいマルタンは思います、ジェマはボヴァリー夫人と同じように悲しい末路を迎えてしまうかもしれない……。心配したマルタンは、思わぬ行動に! そして、物語は急展開していきます。
惹きつけられたのは、マルタンがジェマにパンの捏ね方を教えるシーン。台の上で生地を伸ばしてはまとめていくのですが、その一連の工程が、官能的な世界を描かせたら天下一品のフランス映画だからなのか、なんともエロティックに見えてくる。生地のモッチリした弾力感までもが、スクリーン越しに伝わってくるようです。
『ボヴァリー夫人とパン屋』劇場予告編
パン屋を営む文学好きのマルタンと、近所に越してきた奔放でチャーミングなボヴァリー夫人。 ギュスターヴ・フローベールの最高傑作『ボヴァリー夫人』をテーマにした、イギリスの絵本作家 ポージー・シモンズの人気グラフィック・ノベルを、『ドライ・クリーニング』『ココ・アヴァン・シャネル』 のアンヌ・フォンテーヌがちょ...
via youtu.be
また、“ごはん映画”的な観点から見逃せないのは、マルタンのブーランジェリーで売られているパンや菓子の数々。大定番のバゲット、クロワッサン、ブリオッシュをはじめ、さまざまなアイテムが紹介されます。そのいくつかをピックアップしましょう。
・エピ
エピ=「穂」。細長いバゲットやフィセルの生地にクープ(切れ目)を入れて、生地を左右交互に広がるように分け、麦の穂を思わせる形状にして焼き上げたものです。プレーンはもちろん、ベーコンやチーズを入れたものも見かけますね。
・パン・ド・カンパーニュ
「田舎パン」あるいは「田舎風パン」を意味。水、パン酵母、粗塩などのシンプルな配合で作られた素朴なパンで、素材の味をダイレクトに感じさせてくれます。スープと合わせたり、具を挟んでサンドイッチにしたりするのがおすすめです。
・フロランタン
サクサクのクッキー生地にキャラメルでコーティングしたナッツをトッピングして香ばしく焼き上げた菓子。フロランタンとは「フィレンツェの」という意味で、フィレンツェからフランス王家に嫁入りしたカトリーヌ・ド・メディシスによって伝えられたという説があります。
このほかにも、ノルマンディー地方には、その土地ならではのパンや菓子があります。リンゴや洋ナシを丸ごとパイ生地で包んで作った「ブルドロ」、お米を使った郷土菓子「トゥルグール」、クープが美しい「パン・ブリエ」など。昨今、日本では世界中のパンが食べられると言われるほど、多種類のパンが作られているので、機会があったら試してみるといいかもしれません。
映画の終盤、ジェマは実際に死を遂げます。その死因は小説のボヴァリー夫人のように毒、ではなくて、マルタンにも関係のあるモノ。ぜひ、劇場に足を運んで、その“皮肉”をご自身の目で味わってみていただけたらと思います。
(甘利美緒)
・エピ
エピ=「穂」。細長いバゲットやフィセルの生地にクープ(切れ目)を入れて、生地を左右交互に広がるように分け、麦の穂を思わせる形状にして焼き上げたものです。プレーンはもちろん、ベーコンやチーズを入れたものも見かけますね。
・パン・ド・カンパーニュ
「田舎パン」あるいは「田舎風パン」を意味。水、パン酵母、粗塩などのシンプルな配合で作られた素朴なパンで、素材の味をダイレクトに感じさせてくれます。スープと合わせたり、具を挟んでサンドイッチにしたりするのがおすすめです。
・フロランタン
サクサクのクッキー生地にキャラメルでコーティングしたナッツをトッピングして香ばしく焼き上げた菓子。フロランタンとは「フィレンツェの」という意味で、フィレンツェからフランス王家に嫁入りしたカトリーヌ・ド・メディシスによって伝えられたという説があります。
このほかにも、ノルマンディー地方には、その土地ならではのパンや菓子があります。リンゴや洋ナシを丸ごとパイ生地で包んで作った「ブルドロ」、お米を使った郷土菓子「トゥルグール」、クープが美しい「パン・ブリエ」など。昨今、日本では世界中のパンが食べられると言われるほど、多種類のパンが作られているので、機会があったら試してみるといいかもしれません。
映画の終盤、ジェマは実際に死を遂げます。その死因は小説のボヴァリー夫人のように毒、ではなくて、マルタンにも関係のあるモノ。ぜひ、劇場に足を運んで、その“皮肉”をご自身の目で味わってみていただけたらと思います。
(甘利美緒)
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