2015年5月28日 更新

【ごはん映画】北海道の自然あふれるヒューマンストーリー

歳の離れた兄弟と突然現れた女性とがつむぎだす心の交流。 北海道の自然の景色と、彼らの暮らしの営みをちょっと覗いてみませんか。

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ここ数年、日本のワインがブームになっています。代表的なのが山梨県の甲州ワイン。原料となる甲州種が2010年にワインの国際的審査機関「OIV」に登録され、甲州ワインは国際的なワインコンクールで数々の賞を獲得するようになりました。そして、日本における主なワイン産地として山梨県と双璧をなすのが北海道。冷涼で、昼夜の寒暖差が激しい気候のもと、さまざまなブドウ品種がつくられています。

今回ご紹介する映画『ぶどうのなみだ』(’14)の主人公は、その北海道の道央に位置する空知でワインをつくる男、アオ(大泉洋)。以前は東京で指揮者として活躍していましたが、演奏会でタクトを振っていた最中に突発性難聴を発症。夢破れて故郷に戻り、亡き父(大杉漣)が遺した木をもとに株を増やして、“黒いダイヤ”と呼ばれるピノ・ノワールの醸造に励んでいます。

アオが共に暮らしているのが、ひとまわり歳の離れた弟のロク(染谷将太)。ロクは父が遺した畑で小麦を育てています。兄とは表面的に良好な関係を保っていますが、幼い頃に母を亡くし、音楽の道を志そうとした兄は家出、さらには父が他界して、孤独にさいなまれて生活せざるをえなかったことから、胸の内では兄に対して複雑な気持ちを抱えています。

そんな二人の目の前に、ある日、一人の女性がキャンピングカーを運転して現れます。名前はエリカ(安藤裕子)。彼女もまた、幼少期に母親(江波杏子)に捨てられたという暗い過去を背負って生きています。キャンピングカーで旅をする目的は、アンモナイトの化石を見つけること。アオのブドウ畑に隣接する土地をターゲットにした彼女は、数日間、そこに滞在し、アオとロクの暮らしに新たな風を吹き込んでいきます。

なぜ、アオがワインづくりを始めたのか。なぜ、エリカがアンモナイトの化石を探すのか。本作ではそれがはっきりとは語られません。アオの父がブドウの木を遺し、エリカの母が幼いエリカにアンモナイトの化石をプレゼントしたことが描写されるのみです。恐らくこれが三島有紀子監督の作風なのでしょう。彼女の長編初監督作品である『しあわせのパン』(’12)でも、この『ぶどうのなみだ』でも大きな事件は起こりません。ストーリーは実に淡々と展開されていきます。それでも心にしみじみ迫ってくるのは、彼女独特のファンタジー調と、カメラが捉える北海道の豊かな大自然がスパイスになっているからではないかと思います。

これは私なりの解釈ですが、二人は北海道の“土”に惹かれて、ワインをつくり、アンモナイトを探しているのかもしれません。ワインにとってはテロワールが重要。テロワールという言葉はさまざまな要素を差しますが、その最たるものが土壌です。良質のブドウを得るためには土壌のことを知らなければいけない。理想のワインづくりに難航するアオが土を食べるシーンがそれを象徴しています。また、エリカは自らが堀った大きな穴の中に横たわりながら安らかな顔を浮かべます。そのシーンを見て、人は土から生まれ、土に還るということを思い出しました。また、土はアオと父、エリカと母を繋ぐ“かすがい”でもあります。ワインもアンモナイトも、それ自体にはさほど意味がなく(両者は空知地方の名物ではありますが)、土の偉大さと、切っても切れない親子の絆を伝えるための小道具であるような気がしました。

「土臭いワインほど、時が経つといいワインになる」

そのセリフを聴きながら、アオのワインが体にすうっと染みわたって、癒されたような錯覚を覚えました。ホントのことを言えば、私自身はファンタジー調の映画が得意ではありません。でも、この『ぶどうのなみだ』にはいい意味で裏切られました。疲れたときに観ると、一服の清涼剤となってくれるかもしれません。

(甘利美緒)
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発売元:アスミック・エース
    クリエイティブオフィスキュー
販売元:アミューズソフト
税抜価格:4,980円
©2014 『ぶどうのなみだ』製作委員会
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ビデリシャス編集部 ビデリシャス編集部