2015年5月28日 更新

【ごはん映画】人生は一度きり。皿の上に織りなされる料理のように自分らしく個性的に

一流の料理人になるまでの道のりを、情熱のまま、欲望のままに行動できるところは日本人から見たらうらやましいかもしれません。

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いやあ、ひさびさにアグレッシブな映画に出合いました。これは記憶に残る“ごはん映画”となる予感がしています。何がアグレッシブって、ヒロインの型にハマらない考え方! 料理に対しても、そして男と女の関係についてもイイ意味で無鉄砲極まりない。スペイン女性はとかく情熱的といわれますが、その真髄がギュギュっと凝縮されているような、じつに濃密な作品です。

『地中海式人生のレシピ』(’09)の物語の舞台はバルセロナの小さな港町。1968年、ケネディ暗殺の日に、レストランを営む両親のもとに生まれたソフィア(オリビア・モリーナ)は、幼い頃から天才的な味覚のセンスに恵まれ、いつしか「一流の料理人になりたい」という夢を抱くようになります。が、母親からは「普通の仕事につきなさい」と反対されて衝突する日々……。ある夜、自分のレストランを持ちたいと願う幼なじみのフランク(アルフォンソ・バッサブ)に誘われて、ソフィアはトニ(パコ・レオン)という恋人がいながらも、シェフとして修業をするために町を出ていきます。しばらくして遠距離恋愛に耐えられなくなったトニがソフィアを訪ね、彼女を連れ戻そうとするのですが、ソフィアは夢を断ち切れない。しかし、しばらくしてトニのもとに帰り、二人は結婚。二人は子宝に恵まれ、不動産業で成功していたトニの計らいで豪邸に暮らします。“幸せを絵に描いたような”とはこのことといった感で、観ている側としては羨ましいことこのうえないのですが、ソフィアの「一流の料理人になりたい」という野望は燃え尽きておらず、またもフランクの誘いに応じて、キャリアアップのために料理の世界へ戻っていきます。

話は少し脱線しますが、昨秋、ニューヨークのミッドタウンに本店を置く現代北欧料理レストラン「AQUAVIT(アクアヴィット)」が『ミシュランガイド2015』で1つ星から2つ星に昇格し、しかも同店のエグゼクティブシェフがスウェーデン人出身の女性シェフ(エマ・ベングソン)ということで多くの注目を集めました。よく、料理業界は“男の世界”と言われます。女性の活躍は、それだけでも脚光を浴びるというのが現実です。映画では、ソフィアが生まれたのは1968年と設定されていますから、女性がそこで幸せを掴むのがどれほど容易でなかったかは想像に難くありません。

といっても、この映画は、ソフィアが一流の料理人になるまでの道のりをシリアスに描くようなことはしません。むしろスペインの太陽のように情熱的。恋愛、結婚、子育てという人生の節目を迎えながら、その都度、ソフィアは自分の心の声に忠実に耳を傾け、常識にとらわれることなく、欲望のままに行動します。そのソフィアの大胆さを端的に物語っているのが、ソフィアのベッドの上での営み。ソフィアはトニという恋人がいながらフランクと関係を持ち、トニと結婚してからも、フランクは生涯の恋人だからと、なんと3人で寝室を共にするのです。でも、この映画においては、それがさほどふしだらなことに感じられない。なぜでしょう。ソフィアを演じるオリビア・モリーナの脱ぎっぷりの良さも手伝っているのでしょうが、映画のキャッチコピーに「失敗も寄り道も幸せへのステップ、大切なのは探しつづけること」とあるように、自分にとって何が一番コンフォタブルなことかはトライしてみないとわからない、その象徴として、“普通でない”ベッドの上の男女関係を描写していることが伝わってくるからかもしれません。
そうそう。“ごはん映画”的には、本作に『エル・ブリ』のフェラン・アドリアが企画協力していることにも触れておきましょう。『エル・ブリ』といえば“世界一”と絶賛されたスペインのレストランで、1997年にミシュランの三ツ星に昇格、“料理界のアカデミー賞”として知られる『世界のベスト・レストラン50』において過去5回、世界第1位を獲得しながらも、2011年7月に閉店。世界の料理業界、グルメファンに衝撃を与えました。また、スペインの三ツ星レストランにおける唯一の女性シェフ、『サン・パウ』のカルメ・ルスカイェーダが協力しているのも見どころ。美食家の方なら、日本橋にある東京店を訪ねていらっしゃるかもしれませんね。地元カタルーニャの伝統料理をベースにしながら新進的な感性がほとばしる料理は観る者の目を楽しませ、物語の脇役として確かな存在感を示しています。

人生は一度きり。皿の上に織りなされる料理のように自分らしく個性的であれ。そして、それを味わうときは、思いっきり味わい尽くさなければ損である。

スパニッシュ・コメディの第一人者として知られるホアキン・オリステル監督からの、そんなメッセージが聞こえてくるような気がしました。前向きになりたいときに、ぜひとも味わっていただきたい一本ですね。

(甘利美緒)
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ビデリシャス編集部 ビデリシャス編集部