今回、“ごはん映画”として取り上げるのは1995年公開の台湾映画『恋人たちの食卓』。本作には、数えきれないほどの豪華な中国料理が登場します。さっきまで走り回っていた鶏を捕まえてさばき、生簀で泳いでいる魚を掬い、大きな中華包丁でバッタバッタと叩き切り、煮えたぎった湯にくぐらせて、煙の出そうな油の中で一気にジャージャーと炒めまくる。調理する音も包丁さばきも臨場感たっぷりで、匂いまで漂ってきそう。食いしん坊の方が観れば、九分九厘で胃袋をムギュッとやられるにちがいありません。
では、早速、ストーリーをご紹介していきましょう。
台北の一流ホテルで料理長を務める初老のチュ(ラン・シャン)は妻と早くに死に別れ、3人の娘を男手ひとつで育ててきました。長女のチアジェン(ヤン・クイメイ)はカトリックを信仰する高校教師。見るからに堅物といった雰囲気を醸し出しています。次女のチアチェン(ウー・チェンリン)は航空会社に勤務する才色兼備。山口百恵さんをきつくしたような美人ですね。そして三女のチアニン(ワン・ユーウェン)は大学生。三姉妹のうち、最も楽天的な性格の持ち主です。
では、早速、ストーリーをご紹介していきましょう。
台北の一流ホテルで料理長を務める初老のチュ(ラン・シャン)は妻と早くに死に別れ、3人の娘を男手ひとつで育ててきました。長女のチアジェン(ヤン・クイメイ)はカトリックを信仰する高校教師。見るからに堅物といった雰囲気を醸し出しています。次女のチアチェン(ウー・チェンリン)は航空会社に勤務する才色兼備。山口百恵さんをきつくしたような美人ですね。そして三女のチアニン(ワン・ユーウェン)は大学生。三姉妹のうち、最も楽天的な性格の持ち主です。
チュの家では、毎週日曜日の晩、家族が揃って食卓を囲み、チュの作った料理を食べるというのが習わしになっているのですが、ある夜の娘たちは、それぞれに自分の問題を抱えていて、家庭料理にしてはあまりに贅沢な皿の数々を目の前にしながらもどこか上の空。チアジェンは学生時代に初恋の男にフラれて深手を負い、以来9年もの間、すっかり男性不信に(と、いうことになっています。あまり詳しく書きすぎるとネタバレになってしまうので、ここから先のことは割愛)。チアチェンは貯金をはたいて新築のマンションを購入、家を出ていこうと考えています。もともとは料理人になりたかったのですが、父親に「勉強しろ」と厨房に入るのを禁じられ、いまだそのことを根に持っています。そして、チアニン。大学に通いながらハンバーガーショップでアルバイトをする彼女は、バイト仲間のボーイフレンドに密かにアプローチをかけていました。
父親・チェが作ったスープを口にして、次女・チアチェンが「ハム(スープの具材)が古い。味覚が衰えたんじゃない?」と辛辣な言葉を吐きます。実際、チアチェンの指摘どおりで、チェの味覚は数年前から鈍っていました。それを、長年の経験によって培われた勘と、職場の同僚であり、親友でもあるウェンに頼って補っていたのです。
父親・チェが作ったスープを口にして、次女・チアチェンが「ハム(スープの具材)が古い。味覚が衰えたんじゃない?」と辛辣な言葉を吐きます。実際、チアチェンの指摘どおりで、チェの味覚は数年前から鈍っていました。それを、長年の経験によって培われた勘と、職場の同僚であり、親友でもあるウェンに頼って補っていたのです。
そんな家族に転機がやってきました。とある日曜の晩、いつものように家族が食卓を囲んでいると、三女のチアニンが「妊娠した」と告白し、家を去っていきます。また、長女も、職場の同僚である体育教師と急接近して、同じように家から離れていきます。真っ先に食卓の輪から外れると思われていた次女が最後に父親のもとに残された。この展開が、なんとも皮肉めいていると思いませんか?
次女のチアチェンもアムステルダムへ転勤することになり、父親は家を売ることを決意します。そこで、新しく加わった家族も交えて一家が揃って食卓を囲み、父親はこれからの人生をどう送るつもりかを話し始めるのですが、(ここにも大どんでん返しが用意されているのでご注目くださいね)、ここでの彼のセリフがなんとも印象深い。
「人生は料理のようにはいかん。
材料が揃わない時もあるし
食べるまで甘いか辛いか予測がつかない」
料理のようにレシピ通りに運ばない。予定調和でないところが人生の醍醐味、ということでしょうか。「食卓」を通して「家族」と「人生」を描いて見せたアン・リー監督の秀作。ラストの奇跡は、あなたに優しさをもたらしてくれるはず。ぜひ、ご自身でじっくりと味わってみてください。
(甘利美緒)
次女のチアチェンもアムステルダムへ転勤することになり、父親は家を売ることを決意します。そこで、新しく加わった家族も交えて一家が揃って食卓を囲み、父親はこれからの人生をどう送るつもりかを話し始めるのですが、(ここにも大どんでん返しが用意されているのでご注目くださいね)、ここでの彼のセリフがなんとも印象深い。
「人生は料理のようにはいかん。
材料が揃わない時もあるし
食べるまで甘いか辛いか予測がつかない」
料理のようにレシピ通りに運ばない。予定調和でないところが人生の醍醐味、ということでしょうか。「食卓」を通して「家族」と「人生」を描いて見せたアン・リー監督の秀作。ラストの奇跡は、あなたに優しさをもたらしてくれるはず。ぜひ、ご自身でじっくりと味わってみてください。
(甘利美緒)
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