2015年6月16日 更新

文明開化は散切り頭、洋服、こうもり傘。そして大人気だった牛鍋。

牛鍋と言えば、假名垣魯文の戯作、『安愚楽鍋(あぐらなべ)』で「牛鍋(うしなべ)食はねば開化不進奴(ひらけぬやつ)」と書かれた一文が余りにも有名なほど、明治と言えば文明開化、文明開化といえば牛鍋と言うほど大人気だったそうです。

牛肉を食べることが避けられていたわけ

元々日本でも肉食が行われていました。「薬食い(くすりぐい)」と言って猪や鹿の肉を食べたり、ウサギや鳥の肉の料理があったりしたほどです。

牛肉が避けられたのには大きく二つの理由があります。一つは八世紀から稲作に役立つ動物を食べることを禁止する触れが繰り返し出されたことです。もう一つは仏教が広まり、役に立つ動物の殺生を忌避し、口にすることは汚れることだと考えられていたからです。その傾向は長く続き、牛肉を調理する日には、仏様に穢れを近づけさせないためにと言う理由で仏壇を閉めたり、牛肉の食事に同席するのを拒否したりと言う人も大勢いたようです。

最初は公使館向けの牛肉屋から始まった

はらおち (2426)

明治に入って欧米の文化がどっと入り込んで来ました。その中で、欧米の食事も入り込んで来ます。後年には『和洋料理番附』という、日本の料理と西洋料理を東西に分けてランキングした番付が出されるほどでした。大関こそ「芋のスープ」となっていますが、二位の関脇には「パンバタビフテキ」とステーキがランクインしていることから、すでに牛肉食が一般に広く受け入れられているのが判るかと思います。

それが文明開化だともてはやされたのは、明治になる少し前に、人々の間に受け入れる土台が作られていたのではないかと考えられます。幕末に、各国の公使館や領事館が出来た頃、日本に駐在する外国人が牛肉を欲したため、横浜へ入ってくる牛肉をあつかう日本の業者が出来ました。そこから次第に日本人に向けて牛肉を売るようになったようです。

その後、日本人に向けて肉の効能や料理ごとに向いた部位などを宣伝したりしたそうですが、まだ一般家庭で牛肉を調理する習慣がなかったため、調理したものを出す店を作ったのが、「牛鍋屋」と牛鍋が出来た始まりです。

牛肉食をとっつきやすくした鍋

ajari (2429)

鍋仕立てにしたことが、猪や鳥肉を鍋で煮て食べていた江戸の人々に牛肉食を受け入れやすくしたこともあるのではないでしょうか。牛鍋屋もテーブルなどは置かず、市松模様のゴザを引いて、箱に火鉢を入れ、その上に鉄鍋を乗せて出したそうです。

今では牛鍋といえば、すき焼きだと思われているところがありますが、その味付けや調理法にもいろいろとありました。牛鍋屋が流行ったころ、江戸では「牛鍋屋」でしたが、大坂では「すき焼き」と言われていたようです。すき焼きは元々良く使い込んだ鋤の刃を火で炙り、そこに醤油漬けにした動物の肉を乗せて焼いたことから言われたようで、醤油味のものだと考えられます。

『東京開化繁昌誌』(明治七年、1874年)には江戸の牛鍋屋では、壁にすき焼き、鍋焼き、玉子焼きなどメニューを書いて貼ってあったとあります。鍋焼きは鉄鍋を牛脂で熱して肉を焼いた物で、同年に記された『東京新繁昌記』には葱と煮込むものが並鍋、牛脂で熱した鍋で煮込むものが焼鍋と書いてあり、すきやきと牛鍋(並鍋)と調理法が既に混在していたようです。

また味付けも、『タレ抜きのスウプに、みりんと醤油をおとして……』(安愚楽鍋)と言う今の割り下に近い、醤油味の味付けと、『葱を五分切りにして、先づ味噌を投じ、鐵鍋ジャジャ肉片甚だ薄く……』(魯文新報)という味噌仕立ての二通りがあったようです。牡丹鍋や雁鍋などはもとからが味噌仕立てで、牛鍋も始めはその流れを汲んだのだと思われます。今でも横浜に残る牛鍋の老舗、『太田なわのれん』というお店では、現在でも味噌仕立ての鍋で牛肉のぶつ切りという当時の食べ方で頂くことが出来るそうです。
 
その味噌味の鍋を、大阪風のすき焼きのようにしたら美味しいのではないか、とアレンジしたものが、美味しいと受けて徐々に広まり現在の形になっていったのかも知れません。今ではすっかり醤油味ばかりのすき焼きですが、味噌仕立てのタレでも美味しそうです。

『太田なわのれん』(http://www.ohtanawanoren.jp/

written by rauya
thumbnail by ajari on flickr
https://goo.gl/S60BcH
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ビデリシャス編集部 ビデリシャス編集部