2015年4月27日 更新

【ごはん映画】料理は大いなる楽しみ!自分探しの結末を得た二人の物語『ジュリー&ジュリア』

2人の女性の料理によって救われ、人生を変えていった物語。普通の主婦から有名料理研究家へ。時代や自己表現は違うがどこか重なる2人の生き方。レシピ本を片手に料理がしたくなる映画です!

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「ビデリシャス」をご覧のグルメな皆さんには、もしかするとジュリア・チャイルドという女性についての説明は必要ないかもしれませんね。

ジュリア・チャイルドは、アメリカでは知らない人はいないというほど有名な料理研究家。1912年、ロサンゼルスの北東に位置するパサデナに生まれ、外交官であった夫と共に30代半ばでフランスへ移住。初めて口にしたフランス料理に魅せられて、持ち前の旺盛な好奇心と「食べるのが好き」という純粋な想いからパリの名門料理学校「ル・コルドン・ブルー」の門を叩きます。そして、そこで学んだ本格的なフランス料理を家庭のキッチンで作れるようなレシピにアレンジし、1961年に750頁超の料理本『Mastering the Art of French Cooking』をアメリカで出版しました。その本はたちまち話題となり、それをきっかけに料理番組のホスト役に抜擢されるジュリア。本番中にフライパンから中身をこぼしても動じない。「失敗してもいいのよ」と愛嬌たっぷりに切り抜けます。そんな気取りのない人柄が受け入れられ、TVディナーがもてはやされていた当時のアメリカの食卓に一大革命を起こしたのです。

ちなみに「TVディナー」とは、メインディッシュと付け合わせが一つのトレイにセットされた冷凍食品のこと。機内食をイメージしていただくとわかりやすいでしょうか。電子レンジでチンすれば立派なディナーができあがる。つまりテレビを観ながらでも気軽に作って食べられる、というものですね。第二次世界大戦後のアメリカでは、電化製品の普及からタイムセービングとTVがトレンドになっていました。そこに目を付けたスワンソン社が1954年にこのTVディナーを発売。すると、瞬く間に全米に広まったそうです。そんな環境の国でしたから、ジュリアの料理本がどれほど画期的なものとして迎えられたかは想像に難くないですよね?
少々前置きが長くなりましたが、今回ご紹介する”ごはん映画”『ジュリー&ジュリア』(’09)は、そのジュリア・チャイルドと、そしてジュリー・パウエルという2人の女性を主人公とする物語です。

ジュリー(エイミー・アダムス)はニューヨークの公共機関に勤務する29歳。既婚。彼女の仕事は市民からの苦情処理で、毎日、ひっきりなしにかかってくる電話応対に追われ、鬱々と過ごしています。学生時代には小説家を志望していましたから、そうした現実は彼女にとって非常に虚しいものでした。華やかな仕事で成功を収める友人たちとランチしては焦燥感に駆られ、人生を変えなければと切望します。

「私にできることって何?」

あるとき、友人の一人がブログを始めたことを知り、自分もやってみようと思い立ちます。肝心なのは何をテーマにするか。そこで閃いたのが彼女の息抜きである“料理”でした。幼い頃、ジュリーの母は客人をもてなすために「ブフ・ブルギニオン」(ブルゴーニュ風 牛肉の赤ワイン煮込み)を作りました。そのレシピは、「アメリカ料理の母」と呼ばれた料理研究家ジュリア・チャイルドのもの。出来栄えはすばらしく、それ以来、ジュリーはジュリア・チャイルドに大いなる興味と親しみを抱いてきました。そこで、ジュリーはブログのタイトルを「ジュリー/ジュリア プロジェクト」と名付け、ジュリアが著した料理本『Mastering the Art of French Cooking』に収録される524のレシピに365日間でチャレンジ、その一部始終を綴り始めるのです。

映画は、料理ブログに奮闘しながら料理の腕を上げていくジュリーを映し出しながら、50年ほど時間を遡ったフランスでジュリア・チャイルド(メリル・ストリープ)が普通の主婦から有名な料理研究家になっていく過程を交錯させていきます。

ル・コルドン・ブルーに入学し、「どうせお気楽な主婦が暇つぶしに来ていると思われているのよ」とムキになって、テーブルから溢れんばかりの膨大な量のタマネギを刻みつづけるジュリア。一方で、ジュリアの料理本に則って「ロブスターのテルミドール」(ロブスターを半身にカットして濃厚なホワイトソースをかけて焼き上げたもの)にトライするべく、生きたロブスターと対峙するジュリー。

劇中の二人には“格闘”という言葉が非常によく似合います。彼女たちにとって料理は大いなる楽しみであると同時に、“自己実現”するための一つの手段でもあるのだということを表現しているのでしょう。ちなみにジュリーのブログは、最終的に数多くのメディアから注目されるようになり、劇中では描かれませんが、2005年にLittle,Brown and Company社から『Julie and Julia:365 Days,524 Recipes,1 Tiny Apartment Kitchen』(邦訳『ジュリー&ジュリア』早川書房)というタイトルで書籍化されました。そして、優れたブログ本に授与されるルル・ブルッカー賞にも輝いています。
そうそう、この映画を語る際にはジュリア・チャイルドを演じたメリル・ストリープの名演についても触れておかなければなりません。メリルといえばハリウッドきっての実力派女優で、アカデミー賞の常連ですよね。先日の第87回アカデミー賞では、最新作『イントゥ・ザ・ウッズ』でなんと19回目のノミネートを果たしています。役になりきるために徹底的にリサーチし、声のトーン、目つき、しぐさ一切を計算し尽くすメリル。ご記憶の方もいらっしゃるかもしれませんが、彼女が演じたジュリアは、公開当時、「ジュリアそのものだ!」と話題になりました。特に料理研究家になってからアメリカのテレビ番組に出演する様子は見事。「ボナペティ!」というジュリアの決まり文句が実にハマっています。メリル・ストリープだったからこそ、料理研究家ジュリア・チャイルドの真実のストーリーを映画化するにあたって、観客への信頼性を与えられたのかもしれません。

話はそれましたが、本とテレビを通じてスターになったジュリア・チャイルドと、ブログの女王となったジュリー・パウエル――料理によって救われ、自分探しの一つの結末を得た二人の姿を目の当たりにして、料理は食べて楽しむものであると同時に、作って達成感を噛みしめられるものであることを再認識させられました。観賞後、たまらなくワクワクして何かにトライしたい気持ちがこみ上げ、ジュリアの本を参考に料理するジュリーよろしく、私も手持ちのレシピ本を睨みながらフライパンを振ったことを告白しておきます。

(甘利美緒)
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『ジュリー&ジュリア』
発売中¥2,381(税抜)
発売・販売元:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
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ビデリシャス編集部 ビデリシャス編集部