2016年2月9日 更新

そろそろワインをはじめてみませんか? vol.17

二回に渡りボージョレ・ワインについてお話してきました。ボージョレ地方の生産者は、とてもとても苦境に立たされています。 ボージョレ地方全体の生産量は激減しています。輸入量が、全盛期の半分の量まで減ってきているお話をしました。 ボージョレ・ヌーボーが世界的に買われなくなっただけでなく、ボージョレ地方全体の生産量が10年前と比べると半分の生産量に減っています。買われなくなったことで、廃棄しているワインもあると聞きます。新しくワインを造っても、前年度のワインが残っていては置き場所に困ってしまいます。勿体無いとは言っていられない現実がここにあります。人気の低いワイン産地もあるのですが、日本は世界中のワインが集まってくる幸せな国です。もっともっと、色々な産地の色々な葡萄品種、様々なワイン達を飲んでみて欲しいなって思います。もう少しボージョレ・ワインについてお話したいと思います。 ボージョレ地方、そしてボージョレの地で作られるガメイ種についてお話させてください!!

ガメイという黒葡萄品種について

Gamay grapes by Sue145 (16556)

via Gamay grapes by Sue145
ガメイの正式名称は「Gamay noir à jus blanc ガメイ・ノワール・ア・ジュ・ブラン」
「白い果汁を持つ黒いガメイ」という意味でしたね!!
image by 筆者 (16558)

via image by 筆者
村はブルゴーニュ地方の「ピュリニィ・モンラッシェ」近郊にあります。距離にして約3㎞、徒歩で約40分です。
ガメイ村の領主が十字軍の遠征から持ち帰った葡萄だったことが、名前の由来だと言われています。

「ガメイ」と呼ばれる葡萄品種のほとんどは、「ガメイ・ノワール・ア・ジュ・ブラン」です。
ですが「Gamay de Chaudeney  ガメイ・ドゥ・ショードネ 」や「Gamay de Bouze ガメイ・ドゥ・ブーズ」といった、「Teinturier タンテュリエ」と呼ばれる赤っぽい果肉の葡萄品種が僅かに栽培されています。
意識的にそれらの品種と区別して「ガメイ」ではなく「ガメイ・ノワール・ア・ジュ・ブラン」と表すこともあります。

「ガメイ」は早期に発芽、開花、成熟する黒葡萄です。
フランスのロワール地方のように涼しい地域でも繁茂します。

フランス以外では、カナダ、イタリア、クロアチア、セルビア、コソボ、マケドニア、スイスなどで栽培されています。

余談ですが、カリフォルニアで 「Gamay Beaujolais ガメイ・ボージョレ」や 「Napa Gamay ナパ・ガメイ」と呼ばれている品種は ガメイ・ノワール・ア・ジュ・ブランとは違う品種です。
「ガメイ・ボージョレ」はピノ・ノワールの劣性クローン、「ナパ・ガメイ」はヴァルディギエ(Valdiguié)種という、南仏で栽培されていた古代品種です。

※遺伝子の劣性とは、ある形質を決定する対立遺伝子が対にならないとその形質が表に出てこないということです。「劣性」は「劣っている」などの意味ではないので誤解しないでくださいね!!
Gamay Vines at Lapierre by jameson (16561)

「ガメイ」は栽培が容易で過剰に実をつけることから、針金や杭を使わない最も古典的な株仕立て(コブレ Goblt)という整枝法で育てられています。
via Gamay Vines at Lapierre by jameson
Vakantie Beaujolais 2011-129 by Joris Leermakers (16562)

ボージョレ地方では、機械ではなく手摘みでブドウの収穫を行います。
葡萄は斜面に密植され、樹高が低く、収穫の機械化が困難なのです。

ボージョレ地方におけるガメイの植栽密度は非常に高く、1haにつき6,000~13,000株です。ボルドーの格付けシャトーで1haにつき10,000本位ですから、その密度の高さに驚きます。
植栽を高密度にすると葡萄の株同士競争をする為、根は横ではなく地中深くに伸びていき、葡萄の品質を向上させます。

手摘みは大変な作業ですが、摘果時に選別が可能なことや、果実を傷つけることなく収穫できるメリットがあります。
果実に傷がついた葡萄は酸化の原因になりワインの質を低下させてしまうのです。
via Vakantie Beaujolais 2011-129 by Joris Leermakers

黒葡萄ガメイの数奇な運命

昔はブルゴーニュ地方でもガメイの栽培がされていたとお話しました。

14世紀末頃、ブルゴーニュでは病虫害によってピノ・ノワールの畑は壊滅的な状態に陥ります。それは19世紀末の有名な病虫害「フィロキセラ」に匹敵するものだったそうです。
そしてピノ・ノワールに替わり、病虫に耐性のある「ガメイ」が植えられていきました。

しかし仕上がるワインは、ピノ・ノワールのワインとは程遠いものでした。ガメイの栽培はブルゴーニュの石灰、粘土石灰の土壌に適さず、酸味の強すぎるワインに仕上がってしまうのです。
ピノ・ノワールよりも栽培が易しく、果実は過剰に実り収量が多いことから、ガメイの樽がピノ・ノワールの樽に不正に混ぜられて売られる事態も起こり、ブルゴーニュ・ワインの評判は落ちていきました。

この時代ブルゴーニュ地方を公領としていたブルゴーニュ公は、フランス王家をしのぐ財力と政治力を持っていました。公国の外交にはワインを活用しており、一流の品質をワインに求めていました。

高品質に仕上がらないガメイを「どんな天の創造物であろうともその災禍たる性質の元では適切に扱いきれない。黄色く厚ぼったいワインを造り出す劣悪で卑劣なガメイ」と嫌い、1395年のブルゴーニュ公フィリップ・ル・アルディ(Philippe le Hardi)は、ブルゴーニュでのガメイの栽培を禁止し、赤ワイン生産品種をピノ・ノワールに定めました。違反者には重い罰金を課したり、家畜や馬車を没収するなどしてガメイを一掃させたのです。

こうしてガメイは当時ブルゴーニュ公国の支配下ではなかった、ボージョレの地へと追いやられていきました。
ブルゴーニュでは栽培に適さなかったガメイも、ボージョレ地方の花崗岩土壌での栽培には適し、現在では世界中のガメイ栽培面積の半分を担っています。

ガメイを使用品種としているアペラシオン

image by 筆者 (16566)

Bourgogne Gamay ブルゴーニュ・ガメイ
via image by 筆者
AOC/AOPを統括しているのはフランス原産地呼称委員会(INAO: Institut national de l'origine et de la qualité)ですが、2011年秋にAOC/AOPブルゴーニュの規約が少し変わりました。

1937年に出されたデクレ(政令)では、ACブルゴーニュの生産地にボージョレの「クリュ」を持つ9つの地域も含めていました。
※現在ボージョレのクリュは10カ所ありますが、当時はレニエ(Régnié)が入っていませんでした。

ところが2011年に出されたACブルゴーニュの規制では、このボージョレ地域が外されてしまいます。
以前はピノ・ノワール100%と、ガメイ100%の「AOC/AOP Bourgogne」が存在していました。
2011年秋の新しい規定で「Bourgogne Gamay ブルゴーニュ・ガメイ」が生まれます。ガメイ(クリュ・ボージョレのAOCの地域のみで栽培されたガメイを使用)を85%以上使用したワインです。
従来の「A.C. Bourgogne」は認めず、その後に「ガメイ」を付けて「Bourgogne Gamay ブルゴーニュ・ガメイ」としなければいけないと定めたのです。

「Bourgogne Gamay」はガメイと品種名が付いていますが、違う品種をブレンドしても良いという規約になっています。
ガメイで造ったワインをA.C. Bourgogneとすることに異を唱えるピノ・ノワール生産者は多くいました。その為、ボージョレ地方のガメイで造ったワインは外すという動きになったのです。
image by 筆者 (16568)

Bourgogne Passe-Tout-Grains ブルゴーニュ・パス・トゥ・グラン
via image by 筆者
Bourgogne Passe-tout-grains は単数で書かれたり、複数で書かれたり、ハイフンが入っていたり、入っていなかったりと書き方は様々です。

赤とロゼが認められており、ピノ・ノワールPinot Noir(30%以上) と ガメイGamay(15%以上)をブレンドできますが、同地区で生産したものに限られます。
ロゼの生産数はごく僅かです。

以前はブルゴーニュにおいて、単一品種で造られない唯一の例外でした。
image by 筆者 (16570)

Coteaux Bourguignons コトー・ブルギニョン
via image by 筆者
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ビデリシャス編集部 ビデリシャス編集部