2015年8月14日 更新

疲れも吹き飛ぶ!昔ながらのスタミナ食 とろろ汁

 麦ごはんにとろろ汁、マグロのお刺身で山かけ、蕎麦やうどんにかけるなど、多くの料理に使われるとろろ汁は、おかず番付では秋の献立として紹介されています。

最初は味噌汁だったとろろ汁

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 とろろ汁は自然薯をすりおろしたものを使いますが、『和漢三才図会』(文政7年、1824年)や『本朝食鑑』(元禄10年、1697年)などでは薯蕷(しょよ)の項で自然薯蕷、山芋、長芋、山の芋などとも読ませていますので、今のようにきちんと区別がされていなかったのかも知れません。
 今では出汁だけで延ばしますが、料理本を見ると味噌で延ばしたものでした。
 『黒白精味集』(延享三年、1746年)にはふくさ味噌(合わせ味噌)へ出汁を入れて煮立て、良く冷まして使うとあります。
 興味深いのは『料理早指南』(享和元年、1801年)で澄まし汁でも「味わいよし」とあるので、主流は味噌汁仕立てでも出汁を使っていた場合もあったのかも知れません。
 とろろの作り方は、おろしたとろろを擂り鉢でよくよく擂り、冷ましておいた出汁か味噌汁を少し加えてはよく擂るのを繰り返すと、とろろ芋と分離せずに作れるとあります。また、擂り鉢の下から上へ擂り上げるように何度も良く擂るのが良いと書かれていますので、空気を入れるようにしながら擂ったのだと思われます。

 とろろ汁はご飯にかけるだけではなく元は汁物としても提供されたようで、温める時には勝栗を入れてよく擂ると粘りが切れないと言われていました。
 また、ナマコを細く切ってとろろ汁にいれたものは「こたたみ汁」と呼ばれて、これも汁物として出されたそうです。

スタミナ食だったとろろ汁

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 『当流節用料理大全』(正徳四年、1714年)では脾腎虚する薬、頻尿便通を調え、気力益し、痩せた人の肌を潤すとあります。

 栄養のあるとろろ汁は夏の暑さで疲れきった身体にも、そして1日八里から十里(約32㎞~40km)ほどを歩き通す旅には人気の料理だったことでしょう。
 東海道など宿場の名物になっていきました。有名なのは歌川広重が描いた寛永年間に出された『東海道五十三次』で「鞠子宿(現在の静岡県静岡市駿河区丸子の辺り)」の絵には「名ぶつ当(と)ろろ汁」の看板を出した茶店が書かれています。この店のモデルは慶長元年(1596年)創業の「元祖 丁子屋」というお店だと言うことです。現在でもこの店は味噌汁仕立てのとろろ汁を出しておられるとのことです。
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 とろろ汁は麦飯にかけて食べるのが当たり前のように考えていますが、『名飯部類』(享和二年、1802年)では必ずしも麦飯にこだわらなくても良い、と書いてあります。ただ、麦飯には食物繊維が豊富ですので、とろろの食物繊維と合わせて整腸作用を促すのかも知れません。

 とろろとはすりおろして出汁などを加えて摺り混ぜてとろとろになるところが語源のようで、山芋などをすりおろしたものとは区別されるようです。
 山芋や長芋をすりおろした料理では、マグロの刺身に掛けたものを「山かけ」と言いますが、もともとは八杯豆腐におろした山芋を掛けた山かけ豆腐から来たのではないでしょうか。『料理塩梅集』(寛文八年、1668年)には薯蕷豆腐の名でこの料理が紹介されています。ですが、『傳演味玄集』(延享二年、1745年)には「山かけ」の項がありますが、これは雉肉を塩だけで澄まし汁にしたものと書いてあり、いつからこの料理から芋をすりおろしたものを指すようになったのか、不思議なところです。

※「丁子屋」(http://www.chojiya.info/
 昔ながらのとろろ汁、そして江戸時代の旅道具など貴重な資料を展示する歴史資料館なども併設されているそうです。

(rauya)


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ビデリシャス編集部 ビデリシャス編集部