2017年9月22日 更新

発酵デザイナーに聞いた、「食品だけではない、発酵の最先端」の話

知っているようで知らない「発酵」のひみつVOL.2

第一回では「発酵」の定義から意外な発酵食品まで、思わず膝を打つ面白い話を多く聞けた。

ちなみに、小倉さんが自宅兼発酵ラボを構えるにあたって標高800メートルの山腹を選んだのは、菌の生態系が多様になる条件が揃っていたからだ。
JR塩山駅から車で15分ほどにある発酵デザイナーのアト...

JR塩山駅から車で15分ほどにある発酵デザイナーのアトリエ兼ご自宅

すなわち、「風通しがいい」「周囲に土がたくさんある」「仕込みのためのいい水が湧いている」「1日の寒暖差、四季の寒暖差が大きい」という諸条件を満たしていた。
蒸した玄米に麹菌をかける

蒸した玄米に麹菌をかける

「これはお味噌汁用の味噌を仕込んでいるところ。麹菌は種麹屋さんから直接購入しているんですが、種麹屋さんっていま全国に10社弱が残っています」

ここで小倉さんが3つのシャーレを持ってきた。
3つの場所で採取した菌

3つの場所で採取した菌

「左から順に庭、リビング、キッチンラボで採取した菌で、室内の奥に行けばいくほど雑菌の数は減り、特定の発酵菌が優勢になってくる。いかに屋外に雑菌が多いかがわかるでしょう。同じエサをやって同じ条件でやってるのにこれだけ差が出てくるんです」

発酵と文化人類学は密接な関係がある

第一回では触れなかったが、小倉さんが発酵に目覚めたきっかけは20代半ばに体を壊したのがきっかけ。

「デザイナーになりたての頃で要するに働きすぎたんです。目は覚めてるんだけど血圧が低過ぎて体を起こせない、喘息で夜も眠れないという状態までいったところで、たまたま味噌屋の娘の会社の後輩と、彼女の大学時代の恩師の発酵学の権威である小泉武夫先生に会いにいくことになりました」

そのとき、小泉先生に「お前、免疫不全で体質弱いから発酵食品食わないと死ぬぞ」と指摘されたという。アドバイス通りに発酵食品を食べる始めたところ、めきめきと快癒。これがきっかけで小泉先生の本を読むようになり、発酵に興味を持ったのが始まりだという。

小倉さんは早稲田大学文学部で文化人類学を学んでいた。発酵のことを調べていくうちに、発酵という現象は文化人類学や子供の頃から好きで勉強していた生物学に似ていることに気づいたそうだ。
今年5月に刊行された著書『発酵文化人類学』

今年5月に刊行された著書『発酵文化人類学』

「発酵の文化を紐解いていくと、その土地の制限や気候的な特徴に帰着します。発酵とか微生物の分野では、『どのように?』というHOWはサイエンスが答えてくれるけど、『なぜ?』というWHYには答えてくれない。このWHYに答えてくれるのが、社会学や文化人類学の領域です」
本棚にも発酵関係の書籍がずらりと並ぶ

本棚にも発酵関係の書籍がずらりと並ぶ

ちなみに、いまは単純に「発酵食品がブーム」ではとどまらないらしい。

「たとえば『哲学やってます』言われたら『古代ギリシャですか? 20世紀ドイツ哲学ですか?』ってなるでしょう。発酵もそれと同じで、いまは『どの辺の発酵ですか?』って聞かれるほど細分化しています」

最近では「菌活美女」も発酵に興味を持ち始めた

しかし、意外なことにデザイナーとして独立して以降、2010年ぐらいまではほとんど収入がなかったそうだ。

「死ぬんじゃねえかっていうぐらい大変でした。でも、2011年の震災以降、発酵食品や電気の自給に注目が集まり、若い人も『発酵のことをもっと知りたい』と言ってくるようになりました。その次に興味を持ち始めたのが『発酵食品を食べてきれいになりたい』という、最近よく聞く『菌活』にいそしむ美女の皆さまでした」

発酵デザイナーとしての仕事は軌道に乗り、現在はいわゆるクライアントワーク的なデザインの仕事はほとんどしていない。以前から個人的に開催していたワークショップも企業や自治体から仕事として声がかかるようになったという。
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ビデリシャス編集部 ビデリシャス編集部